前回に続いて、「相続登記を自分でやってみよう」という方へ向けた記事になります。
今回は、相続登記の申請をご自身でチャレンジされている方からの、よくある質問をQ&A形式でお答えさせていただきます。
Q【資料編】相続登記の申請を自分で行う場合、なにから始めればよいですか?
→まずは、相続登記の申請に必要な資料の収集から始めましょう。
一般的な相続登記に必要な資料は、不動産の登記簿、戸籍一式、固定資産税評価額の分かる書類となります。
Q【資料編】登記簿は、どうやって取得するのですか?
→法務局で、どなたでも取得することができます。
登記簿の取得には、1通600円かかります。
Q【資料編】登記簿を取得しました。なにを確認すればよいですか?
→登記簿の「甲区欄」に所有者の記載があります。
不動産が被相続人の名義になっていることを確認しましょう。
Q【資料編】相続登記に必要な戸籍の範囲を教えてください。
→被相続人の「出生から死亡まで」の戸籍・除籍・原戸籍などが必要になります。
また、相続人全員の現在戸籍も必要になります。
詳しくは、How to相続登記(1)をご参照ください。
Q【資料編】戸籍はどこで取得するのですか?
→「本籍地の」市区町村役所で取得することができます。
被相続人が何度か本籍地を変更されている場合、そのすべての役所で取得していく必要があります。
まずは、死亡時の本籍地で戸籍を取得することがスタートになります。
Q【資料編】戸籍は市役所に電話すれば送ってもらえるのですか?
→電話しただけでは戸籍を送ってもらうことはできません。
本籍地の役所窓口に直接行くか、申請書を記入して郵送で申請書を送付する必要があります。
郵送で請求する場合には、「定額小為替」を郵便局で購入して同封してください。
Q【資料編】被相続人の本籍地が分からないのですが、どうやって調べればよいですか?
→被相続人の「最後の住所地」の役所で「住民票の除票」を取得します。
住民票の除票には、希望すれば
本籍地を記載して発行してもらうことができます。
Q【資料編】古い戸籍の文字が達筆すぎて読めないのですが?
→役所の窓口に持っていき、担当者に確認してもらいましょう。
古い戸籍は手書きで書かれているので、判読するのに苦労することがあります。
また、旧字体で書かれていることもあります。
われわれ専門家は、毎日古い戸籍を読んでいるので、たいがいの戸籍は読めるようになります。
Q【資料編】相続人の範囲を教えてください。
→相続人の範囲は、民法で次のとおり定められています。
まず、死亡した人の「配偶者」は常に相続人となります。
配偶者以外の人は、次の順序で配偶者と一緒に相続人になります。
第1順位 死亡した人の「子供」
第2順位 死亡した人の「直系尊属」(父母や祖父母)
直系尊属は、第1順位の人がいないときに相続人になります。
第3順位 死亡した人の「兄弟姉妹」
兄弟姉妹は、第1順位の人も第2順位の人もいないときに相続人になります。
Q【資料編】兄弟姉妹が相続人になる場合の必要な戸籍を教えてください。
→被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍と、相続人の戸籍が必要になるのは同じですが、兄弟姉妹が相続人になる場合は、両親の出生から死亡までの全ての戸籍も追加で必要になります。
Q【資料編】固定資産税評価額の調べ方を教えてください。
→毎年5月ごろに役所から、「固定資産税納税通知書」が送付されてきます。
その中の課税明細書に、「評価額」または「価格」と記載されている金額が「固定資産税評価額」になります。
納税通知書がお手元にない場合には、不動産所在地の役所で「固定資産税評価証明書」を取得する必要があります。
Q【書類作成編】相続登記の申請書は、法務局に用意されているのですか?
→法務局に用意されているわけではなく、ひな形を参考にご自身で作成する必要があります。
ワープロで作成しても、全て手書きで作成しても大丈夫です。
詳しくは、How to相続登記(5)をご参照ください。
Q【書類作成編】遺産分割協議書ってなんですか?
→遺産の分け方を、相続人全員で協議した内容を書面にしたものです。
法定相続分以外の割合で不動産を取得する場合(例:不動産は全て長男に、預金は妻に)、遺産分割協議書を作成し、法務局へ提出する必要があります。
詳しくは、How to相続登記(2)をご参照ください。
Q【書類作成編】遺産分割協議書は、法務局に用意されているのですか?
→法務局には用意されていません。ひな形を参考にご自身で作成する必要があります。
不動産の表示部分については、法務局で登記簿を取得して正確な記載をする必要があります。登記簿記載のとおりに作成しましょう。
その他の部分も、誤字脱字等が無いように作成してください。
詳しくは、How to相続登記(2)を参照。
Q【書類作成編】遺産分割協議書に押印する印鑑は、認印でもよいのですか?
→「実印」で押印する必要があります。
相続人全員の印鑑証明書も法務局へ提出します。
Q【税金編】登録免許税の計算方法を教えてください。
→固定資産税評価額の0.4%が登録免許税になります。
詳しくは、How to相続登記(4)をご参照ください。
平成30年度の税制改正により、ある一定の相続については登録免許税の免税措置も設けられました。
Q【税金編】自分で相続登記の申請にチャレンジ中です。マンション敷地権の登録免許税計算がよく分からないのですが、その部分だけ電話で教えてもらうことはできますか?
→申し訳ございませんが、電話でお答えすることは出来ません。
ご自身で相続登記の申請をされる場合には、直接法務局へお問合せください。
マンションの敷地については、土地全体の評価額を敷地権割合で算出した金額が課税価格になります。
Q【税金編】相続登記の申請をすると、相続税を払わなければいけないのでしょうか?
→相続登記の申請をしたからといって、相続税を支払わないといけないわけではありません。
被相続人の遺産総額が、「基礎控除額」(3000万円+(相続人数×600万円))を超える場合には、相続税申告の必要があります。
Q【申請編】相続登記の申請は、最寄りの法務局に行けばよいのですか?
→不動産所在地を「管轄」する法務局へ登記申請する必要があります。
法務局のHPにて管轄法務局を調べることができます。
[法務局管轄一覧]
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/static/kankatsu_index.html
Q【申請編】登録免許税は、どのようにして支払うのですか?
→「収入印紙」を購入して、法務局へ納付します。
収入印紙は、郵便局や法務局でも販売しています。
Q【申請編】相続登記申請の際に、法務局に提出した戸籍や遺産分割協議書などの原本を返してほしいのですが?
→申請の際に「原本還付の手続」を行えば、原本の返却を受けることが出来ます。
返却を受けたい原本を全てコピーし、そのコピーに次のように記入します。
[原本還付 原本に相違ありません 氏名 ㊞]
また、戸籍等は「相続関係説明図」を作成すれば、全ての戸籍のコピーをとらなくても原本の返却を受けることができます。
司法書士事務所では、通常こちらの方法で原本還付の手続を行っています。
相続関係説明図については、How to相続登記(3)をご参照ください。
Q【申請編】自分で相続登記の申請にチャレンジ中です。自分で作成した申請書の内容をチェックしてもらいたいのですが?
→申し訳ございません。
ご自身で相続登記申請される場合、申請書の内容等については直接法務局へお問合せください。
Q【申請編】相続登記は、いつまでに申請しなければいけませんか?
→相続登記は「いつまでに」という期間はありません。
しかし、相続人にさらに相続が発生するなど、放置すればするほど手続きが複雑になっていきます。
Q【申請編】相続登記をせずに放置しておいた場合、罰則などはありますか?
→今のところ罰則規定はありません。
現在、相続登記の義務化に向けて改正法案の審議がなされている状況ではあります。
ずっと放置していると、売却したくてもできなくなる、権利関係がどんどん複雑になる、そして疎遠の親戚にも協力してもらわないといけなくなる、といったデメリットが色々と発生してきます。
相続が発生した場合には、速やかに相続登記を行う事をお勧めします。
Q【申請編】相続登記を専門家に依頼した場合の費用を教えてください。
→報酬は68,000円です。
この金額で、資料収集から遺産分割協議書作成、相続登記申請等の全ての作業を代行します。
ご自身で行っていただく事は、「印鑑証明書の取得」のみです。
後の作業は、全て司法書士にお任せのプランになります。
報酬の他に登録免許税等の実費がかかりますが、実費はご自身で行ってもかかる費用になります。
Q【申請編】自分で相続登記の申請にチャレンジしていましたが、途中で断念しました。やっぱり専門家にお願いしたいです。今まで取得した資料などはムダになりますか?
→ムダにはなりません。
既に取得済みの戸籍等の資料がある場合、通常よりも割引金額にて代行させていただく場合もございます。
Q【完了編】相続登記を申請すると、その場で変更が完了するのですか?
→その場では完了しません。
申請書類に何も不備が無ければ、1週間程度で相続登記が完了します。
不備があれば法務局へ再度出向いて補正処理を行う必要がでてきます。
Q【完了編】相続登記が完了すると法務局からなにか貰えますか?
→「登記完了証」と「登記識別情報通知」(権利書)が発行されます。
名義変更が正しく完了したかを確認するために、再度「登記簿」を取得して内容を確認しましょう。