毎年4月、5月は固定資産税の納税通知書が届く時期です。
この固定資産税納税通知書は、その年の1月1日時点での登記事項証明書(登記簿)に記載されている不動産の名義人宛てに届くことになっています。ですから、不動産が亡くなったかたの名前で相続登記が済んでいない場合は、基本的には亡くなられた人宛てに届くことになります。役所としては税金を支払ってさえいれば、相続登記をしていなくても咎められたり、罰則が科せられるということもありません。
しかしながら、現在、土地の所有者不明問題が社会問題化してきております。
土地の所有者不明問題とは、簡単に言えば、登記事項証明書(登記簿)に記載されている所有者の所在や生死がわからず、円滑に不動産の取引を行うことができなくなってしまう問題のことです。
有識者でつくる所有者不明土地問題研究会によれば、こうした土地の所有者が不明なために円滑に売買などの取引ができない土地をあわせると九州の総面積を超える広さになるともいわれています。
ここで、冒頭の相続登記ができていないことと土地の所有者不明問題にどういう関係があるかというと、土地の所有者が不明になる大きな要因として相続登記がされないことと言われています。
先述の通り、相続登記をしていなくても、罰則はなく、いつするのかは相続人の判断に委ねられています。そのため、もし相続登記がされなければ、登記事項証明書(登記簿)上の名義は亡くなった方の名義のままで、実際には相続人の誰かがその土地を利用している、という状態になります。その後、そのまま時間が過ぎてさらに世代交代が進めば、法定相続人は増え、登記事項証明書(登記簿)と実態との違いがどんどん進んでいくことになり、実際の所有者が誰かがわからなくなってしまうのです。
行政もこうした問題に対応するために、現在の任意の相続登記を義務かするかどうかという議論もされはじめています。実際に義務化されるまでは色々なハードルがあるため、すぐに義務化されるようなことはないと思いますが、今年の4月から一定の条件を満たせば、相続登記の登録免許税を非課税にするなど、相続登記を奨励する方向になっています。
我々司法書士も皆様の権利を守るため、相続登記をして土地の実際の所有者を不動産登記に公示することをお勧めしております。
今年の固定資産税納税通知書が亡くなった方の名義で届いた方は、将来の土地所有者不明問題を防ぐためにも一度相続登記の相談に来てみませんか。