2022年4月より18歳から成人とする改正民法が成立しました。
まだ三年以上先のことになりますが、この改正により未成年者は17歳以下ということになります。相続の手続きにどのような影響があるのでしょうか。
現在の法律では、未成年者は制限行為能力者とされ、法律行為をする場合には、親権者が代理して法律行為を行う必要があります。相続が発生した後にする遺産分割協議も法律行為にあたりますので、未成年者が単独ですることはできません。しかし、遺産分割協議が普通の法律行為と違うところは、親権者も協議に参加すべき者であることが多いということです。つまり、お父さんが亡くなって、お母さんと子供一人が相続人の場合、遺産分割協議をすべき相続人はお母さんと子供の二人となります。この場面で、子供が未成年の場合、親権者はお母さんになるのですが、お母さんが子供を代理した場合、遺産分割協議はお母さんと子供を代理したお母さんの実質一人ですることになるので、正当な協議ができないとされます。お母さんの利益と子供の利益が相反するいわゆる利益相反行為となるのです。
この場合、親権者であるお母さんに代わる特別代理人の選任を家庭裁判所へ申し立てることになります。特別代理人は弁護士や司法書士などの専門的な知識を持った者である必要はなく、おじいさんやおばあさん、叔父さん、叔母さんなどの相続人以外の親戚の方を選任しているケースが多いようです。
ここまででも相続人に未成年者がいない場合の手続きとは大きく異なりますが、さらに大きく異なる点があります。家庭裁判所に選任された特別代理人は、未成年者の権利を守るために選任されます。そのため、未成年者が財産を相続しない内容の遺産分割協議は認められない場合があります。被相続人の遺産が相続人それぞれに分けられるような場合であれば、未成年者にも相続させることができますが、例えば遺産が不動産のみの場合、未成年者の名義にすることははばかられることもあるでしょう。そういった場合で名義をいれたくない場合には、代償金を設定するなど、相続人間の相続分について調整することが必要となります。したがって、相続人に18歳、19歳の未成年者がいる場合、未成年者が成年に達するまで遺産分割協議をするのを待ったという話も聞きます。
18歳、19歳ともなれば、十分に判断能力はあると思いますので、遺産分割協議について考えてみればスムーズにできるようになるのではないでしょうか。
余談ですが、改正後も飲酒は二十歳になってからだそうです。勘違いして19歳に飲酒を勧めると罪に問われますので、気を付けましょう。