こんにちは
司法書士の安田です。
司法書士の職責の基本として「人・物・意思」の確認というのがあります。
これは例えば、不動産を売買を原因として名義変更登記の申請を司法書士がする場合に確認すべきこととして挙げられています。
上記の例でいうと、人とは売主・買主を確認すること、物とは売買する不動産の確認をすること、意思とは売主が本当に買主に対して不動産を売却しようとしているか確認をすることをいいます。
なぜ司法書士がこのような職責を負っているかというと、登記を申請する法務局の登記官は形式的審査権しかありません。形式的審査権とは形式的に定められた書類が揃っていれば登記申請を受理するということで実体上本当に所有権が移転しているかどうかまでは確認しないというです。
そこで実体上のことについては司法書士が確認することで、不実の登記を防ぎ不動産取引の円滑をはかることができるからです。
前置きが長くなりましたが、最近思うことは「人・物・意思」の内、意思の確認が一番気を遣うところだということです。
痴呆症や成年後見制度という言葉を耳にしたことがあるかと思いますが、これらは今回の意思確認について密接に関わりがあります。痴呆症の方に意思確認する際にその意思が真に法律効果を理解した上での意思表示かどうか、そもそも意思能力があるのかどうかを確認する必要があります。意思能力が無ければ民法上その契約は無効になってしまいますが、登記申請に必要な書類を揃えて法務局に登記申請をすれば受理され無効のはずの登記が完了してしまうことになります。
痴呆症といっても程度は様々なので、どこまでは大丈夫でどこからがだめという基準はありません。そこはご本人と面談し、ご本人の周りの方からの情報も取り入れつつ判断していく他はありません。
そう考えると司法書士とはなかなか重い職責を担っているのだなと感じる今日この頃です。