地籍調査とは
地籍調査とは、国土調査法、不動産登記法に基づき、主に市町村が主体となって、一筆(※)ごとの土地の所有者、地番、地目を調査し、境界の位置と面積を測量する調査です。「地籍」とは、土地の存する場所、いわば「土地に関する戸籍」のことです。各個人には固有の「戸籍」という情報があり、様々な行政場面で活用されているのと同様に、土地についても「地籍」の情報が行政の様々な場面で活用されています。
我が国では、土地に関する記録は登記所において管理されていますが、土地の位置や形状等を示す情報として登記所に備え付けられている地図(公図)は、その半分ほどが明治時代の地租改正時に作られた精度の低い地籍図(村図、字限図、一筆限図)などをもとにしたものです。そのため登記所に備え付けられている地図(公図)は、境界や形状などが現実とは異なっている場合が多くあり、また、登記簿に記載された土地の面積も、正確ではない場合があるのが実態です。
地籍調査が行われることにより、その成果は登記所にも送られ、登記簿の記載が修正され、正確な地図が更新されることになります。また、固定資産税算出の際の基礎情報となるなど、市町村における様々な行政事務の基礎資料として活用されます。
※土地の所有権等を公示するために、人為的に分けた区画のこと。土地は「筆」(ひつ)という単位でカウントされます。登記所では、一筆ごとに登記がなされ、土地取引等の単位となっています。
地籍調査の目的
①土地取引の円滑化・登記手続の簡素化
地籍調査が未実施で、土地の境界等が不明確な地域では、土地の取引や担保権の設定の際、境界調査に多くの時間や費用を要することがあるほか、隣人との間で境界をめぐって争いが生じることもあります。多くの場合、これらは潜在的なリスクにとどまるものの、ひとたび土地の売買や相続等で問題が顕在化した場合には、円滑な土地取引等の支障となります。また、相続に伴う土地の分筆の際など、登記所への分筆登記申請に当たって、通常、土地所有者自ら隣接地権者に現地立会いを求めて境界を確認する必要がありますが、地籍調査の成果を活用することにより、登記手続が簡素化され、手続に要する費用が縮減されることもあります。
②公共事業の効率化・まちづくりへの寄与
道路の建設・拡張などの公共事業を実施する際には、測量と用地買収が行われますが、土地の境界が不明確な場合には、用地買収に先立ち、該当箇所のみならず周辺地域一帯の用地測量等が必要となる場合があります。このため、本来不必要な時間とコストがかかり、進捗状況次第では工期が遅れ、事業自体が中止となるおそれもあります。同様に、土地区画整理事業や市街地再開発事業等のまちづくりを進める上でも、特に都市部においては関係者が多数となることもあり、境界確認の未実施が各種事業の阻害要因となります。
③災害復旧・復興事業の迅速な実施
地震・津波、土砂崩れ、水害等の災害によって、土地の形状が変わり、現地の境界目印等が流出してしまった場合、地籍調査が実施されていなければ、確認作業が困難になるとともに、地権者が亡くなっていれば立会いによる調査も不可能となり、復旧計画の策定に大きな支障を来します。災害復旧においては、特にライフラインの復旧、住宅再建等のスピードが最重視され、境界確認の遅れがそのまま復興事業の遅れにつながってしまいます。事前に地籍調査が実施されていれば、個々の土地境界が地球上の経緯度など座標値で結び付けられ、数値として管理されるため、万が一現況が大きく変化しても、境界等を正確に復元することができます。
④固定資産税の徴収適正化
地籍調査が実施されていない地区の登記簿上の地積は、明治時代の地租改正時の測量に基づくものも少なくなく、当時は面積を過小に申告することが多かったことから、実際の面積よりも小さくなっている場合があります。地籍調査を実施することで正確な測量が行われ、多くの場合、面積が増加することから、課税額が是正され、課税負担の公平性が確保されます。
まとめ
メリットとしては、①公費により私有地の境界が明確になる。②無用な土地トラブルの未然防止。
③土地取引の円滑化。などがあげられます。しかしながら公共事業といえども土地所有者双方のコンセンサスが必要となり、地価の高い都会などでは実施が困難となるため、現在までは過疎地域を中心に行なわれていたのが実情です。
近年は東北大震災等の教訓を踏まえ、南海トラフ地震、都市直下型地震等未曽有の災害に備え③の重要性がクローズアップされており、地籍調査の一層の推進が求められています。