相続放棄が急増しているけど、簡単にできるの?!

亡くなった親族の財産や借金の相続を拒否する相続放棄(そうぞくほうき)が年々増加しています。

2015年の相続放棄件数は18万9,381件に上り、1985年の4万6,227件に比べて4倍に増えています。この背景には親の借金などによるマイナスの相続を放棄するものだけではなく、ふるさとを離れて都市部で就職・生活する人が、住む予定がない実家である不動産の相続を維持費用や固定資産税の負担を避けるための相続放棄も増えています。

しかし、相続放棄は簡単にできるものではありません。

当人は相続放棄をしたつもりで、他の相続人に告げたり、自身が相続放棄すると思っているだけでは、相続放棄にはなりません

プラスの財産だけしかない場合はいいのですが、借金などマイナスの財産がある場合には、相続放棄の手続を正式に行っていないと、相続人が借金を背負うことになってしまうのです。
ここでは、手遅れにならないために、相続放棄について知っておかなければならないこと、手続きの仕方、申請書の書き方について紹介します。

  1. 相続放棄って何?
  2. 相続放棄をする前にしっかり検討しましょう!
  3. 相続放棄の注意点!
  4. 相続放棄の必要書類
  5. 相続放棄の申述書の書き方
  6. 相続放棄手続きの流れ

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そもそも相続放棄って何ですか?

相続とは、亡くなった人(被相続人)が生前、所有していた財産を、その配偶者(妻・夫)や子ども、あるいは孫が受け継ぐことをいいます。
受け継ぐものは、現金や預貯金、家屋、自動車、美術品などのようなプラスの財産だけでなく、借金や損害賠償債務、未払いの医療費といったマイナスの財産も含まれています。

相続という制度は、亡くなった方の遺族の生活を保障するためにつくられたものだとする説もあり、本来は遺族を援助する制度と考えられています。
とすると、マイナス財産が受け継がれてしまったとなれば、借金などを遺族が支払っていくこととなり悲惨なことになりかねません。そこで、相続人が財産を放棄できる「相続放棄」という制度が法的に認められているのです。

遺産分けの話し合いの中で、私の取り分はゼロでいい、と話したことを「相続放棄」と混同されている人がいますが、法律的な意味で、それは「相続放棄」にはなりません。遺産の取り分はいらないというのは、相続すること自体を承認しており、マイナスの遺産があった場合、債権者から請求がきて「それは引き継いでない」とはいえないのです。

相続放棄は、ただ単に他の相続人に告げたり、当人が相続放棄すると思っていればよいだけではなく、管轄となる家庭裁判所に相続放棄する旨を申述(しんじゅつ/申し述べること)しなければ効力は生じないのです。
管轄となる家庭裁判所とは、亡くなった方が最後に住んでいた住所(住民票届け出がある住所)の近くの家庭裁判所です。相続人である本人の近くの家庭裁判所ではありませんのでご注意ください。

そして、法律上の「相続放棄」と認められるためには、相続人が、相続の開始があったことを知ったときから「3カ月以内」に、「家庭裁判所」で手続きを行う必要があります。3カ月を過ぎると、故人の負債をそのまま抱え込むこととなり、後悔することになりかねません。

相続放棄をする前に、しっかり検討しましょう!

相続放棄というのは、念を押すようですが、マイナスの負債だけではなく、プラスも含めてすべての財産を引き継ぐ立場を放棄する手続きです。

どれだけ被相続人(亡くなった人)に借金や未払金といった債務があっても、支払いの義務はなくなります。相続するとなると、「遺言書の有無の確認」「相続財産の調査」「遺産分割協議」「所得税の準確定申告」「相続税の確定申告」「相続財産の名義変更手続き」など、様々な手続きをしなければなりません。こうした煩わしい手続きからも解放されます。

いっぽうで、実家の不動産も、ダイヤモンドの指輪、美術品などプラス財産があっても受け継げなくなるのです。「あの土地は相続したい」「ダイヤの指輪は欲しい」「あの掛け軸は欲しい」というのであれば、「相続放棄」ではありません。

自分が受け取れる相続財産のすべてを計算してプラスが出るなら、デメリットが多い実家でも相続すればいいのです。

すべての財産を受け継ぐか、すべて受け継がないかを判断するのが相続放棄です。相続放棄後に高額のプラス財産が出てきても、もはや受け継ぐことはできません。原則、相続放棄は詐欺や脅迫などを受けたときをのぞいて、撤回や取り消しはできません。

相続放棄には3カ月という申述期間が定められているため、この期間内に被相続人(亡くなった人)の財産状況を把握し、どうするかを判断しなければなりません。

相続放棄とは別に、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ「限定承認」という手続き方法もあります。マイナスの財産の金額がプラスの財産より明らかに多い場合や、わかっていない借金が残っている可能性がある場合などに有効な手段です。

プラスの財産とマイナスの財産、どちらのほうが多いのかわからないということは、ままあることです。「後日、多額の借金が見つかって、マイナスの財産のほうが多かった」そんな時、限定承認であれば、相続したプラスの財産より多いマイナスの財産の部分は支払わなくてもかまいません。結果的にマイナスの財産よりプラスの財産のほうが多かったとしても、財産はそのまま引き継げます。

しかし、実際にはこの手続きを利用される方は少ないです。相続放棄に比べて手続きが非常に面倒で、しかも税務上のリスクがあるため、借金の相続を逃れるために相続放棄が選ばれることが多いのですが、ひかり相続手続きサポーターでは>ご依頼者様の状況に応じて相続放棄、限定承認のどちらを選択する方がベストかなどを相続の専門家としてご提案させていただきます。 【限定承認についてくわしくはこちらをご覧ください

知らないと、後悔することに。相続放棄の注意点!

1,相続放棄は、正式な手続きをしたからといって必ず認められるわけではありません。

相続放棄の申述(しんじゅつ)期間である3カ月の期間内に、下記のような行為があった場合、「単純承認」があったとみなされ相続放棄ができなくなります。
単純承認とは、相続をするという意思表示をすることです。被相続人(亡くなった人)の一切の権利義務を「無限に」承継することになりますので、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も、すべてそのまま受け継ぐことになります。

単純承認は、以下の事由がある場合に成立することになります。

  • 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき
  • 相続財産の全部、または一部の隠匿
  • 遺産分割協議(相続人全員の合意で被相続人の遺産の分け方を決めること)に参加
  • 相続財産の名義変更をしたとき

なお、被相続人(亡くなった人)の税金の滞納分を被相続人の財産の中から支払ったり、葬儀費用を清算したりする行為は単純承認にはなりません。

また、形見分けを受ける行為は、原則として、単純承認にあたりません。

しかし、形見分けといわれる行為は、一般的に、それほど経済的な価値の高くないものについて行われるもので、それを超えるような形見分けの行為は、単純承認事由となる場合があります。

2,保険金や遺族年金は、相続財産に含まれません。

死亡保険金といった生命保険金や死亡退職金は、受取人固有の財産とされていますので、相続財産の中には含まれていません(しかし税法上、みなし相続財産として取り扱われる点には注意が必要)。

そのため、相続放棄をしても生命保険金や死亡退職金を受け取ることは可能です。

ただし、生命保険の受取人が亡くなった本人(被相続人)になっている場合は、相続財産となってしまうことがあるので、相続放棄をするともらえなくなる可能性があります。
また、遺族年金は、相続放棄と関係なく受給することができます。

3,自分が相続放棄をすると、次の順位の人へ相続権が移ることになります。

相続の順位(法定相続人)

配偶者

第1順位 死亡した人の子
第2順位 死亡した人の父母や祖父母など(直系尊属)
第3順位 死亡した人の兄弟姉妹

例えば上図のように、妻や子が相続人となるケースで、子2人が相続放棄すると、相続権は第2順位の被相続人の父母に移ります。父母がすでに死亡していたとすると、相続権は第3順位の被相続人の兄弟姉妹に移ります。相続権が移るということは、借金があった場合にそれも移ることになるのです。

それだけに、前述の例で、子が相続放棄するのであれば、次の順位である父母や兄弟姉妹に「債務が多いので、相続放棄したほうがいい」と知らせておかないと、恨まれることになりかねません。もちろん、相続放棄の期間は、当人が相続人になったことを知ってから3カ月です。

受け継ぐ遺産を放棄するだけだから単純、といった認識は間違いで、のちに様々なトラブルが発生するおそれがあります。

財産調査まではなんとかクリアできても、その結果を見て、単純承認をするのか、限定承認をするのか、相続放棄にすべきなのかといった判断は、素人の方にとっては悩ましく簡単に判断できることではありません。

相続放棄で失敗しないためには、相続の専門家に相談依頼していただくのがもっとも賢明ではないかと思います。

相続放棄の必要書類

  1. 相続放棄の申述書(相続放棄申述書の書き方)
  2. 亡くなった人(被相続人)の住民票除票又は戸籍附票
  3. 相続放棄をする人の戸籍謄本
  4. 収入印紙 800円分
  5. 郵便切手(家庭裁判所により金額は異なります)

上記以外にも相続放棄する人がどの立場かによって用意すべき書類が変わります。

相続放棄の申述書の書き方

相続放棄の申述書は家庭裁判所でもらうことができます。
また下記より裁判所のサイトからダウンロードすることができます。

相続放棄の手続きの流れ(弊社依頼の場合)

相続放棄をひかり相続手続きサポーターに依頼するメリット

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