家族信託の事例紹介

遺産分割前の生前合意を有効に発生させたい

Aさんは妻に先立たれ、自宅に1人で暮らしておられます。

現在は近くに住む長男Bさんの家族が定期的に会いに来てくれるため生活に不安はないが、将来Aさんが認知症になった場合、長男Bさんの家族に負担をかけたくないため、自宅を売却して老人ホームに入居したいと考えています。

長男Bさん、次男Cさん、三男Dさんは互いに仲が悪いわけではないが、次男Cさんの家族も三男Dさんの家族も遠方に住んでいるので、やや疎遠となっています。Aさんは自分の介護や財産管理等は長男Bさん家族に任せたい、またその分、長男Bさんには他の兄弟よりもAさんの財産を多く渡したいと考えています。次男Cさんも三男Dさんもそのことについて黙認しているが、将来揉めないようにしたい。

問題点とそれに対する対策

  • 次男Cさん、三男Dさんは、今は黙認しているが、将来気が変わると、Aさんの介護や財産管理について干渉され、長男BさんのAさんへのサポート体制が揺らぎかねません。
    →Aさんをサポートするために必要な長男Bさんの権限を確保する
  • Aさんが遺言を書いても書き換えられる可能性があり、長男Bさん家族の貢献度が将来の遺産分配に反映される保証がありません。
    →次男Cさんや三男Dさんの合意を有効な書面に残しておき、将来相続で揉めないようにする。

家族信託で解決

委託者 Aさん
受託者 長男Bさん
受益者 Aさん
信託監督人 司法書士E
信託期間 Aさんの死亡まで
残余財産の帰属先 すべて現金化し、長男Bさんに50%、次男Cさん・三男Dさんに各25%
  1. 信託契約で財産管理の権限を長男Bさんに与える
    Aさんは長男Bさんとの間で、自宅等を信託財産とする信託契約を締結し、自宅売却を含めた
    Aさんの財産の管理・処分の権限を長男Bさんに集約します。
  2. 任意後見契約で身上監護の権限も長男Bさんに与える
    次男Cさんや三男Dさんから、将来長男Bさんの介護方針への適度な干渉を受けないように、任意後見契約も同時に締結しておきます。これにより、いざという時に任意後見契約を発動させ、身上監護も長男Bさんに集約させ、Aさんの財産管理と生活全般を長男Bさんがサポートできる体制を確保できます。
  3. 信託における遺言の機能で安易な書き換えを防ぐ
    Aさんが死亡した時点で信託は終了し、信託終了時の残余財産の帰属先を長男Bさんに多く分配する旨を信託契約に規定します。また、Aさんと受託者Bさんと信託監督人(受託者を監督する者)との合意がなければ、一旦合意した遺産分配の内容を簡単には撤回できないようにします。これにより、信託契約後に遺言の書き換えがあっても、信託契約で定めた信託財産の遺産分配の指定は守られます。

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