家族信託の事例紹介

賃貸アパートの管理と売却(収益不動産の管理処分)

父親がなくなり、母親と3人の子どもが相続人となりました。

父親の財産には、母親との共有での賃貸アパートがあり、父親が健在の間は夫婦で賃貸管理業務をしていましたが、母親が高齢になってきたこともあり、1人でやっていくことに不安を感じています。子どもである3人の相続人もそれぞれ、結婚し、それぞれの家庭と仕事をもっているため、そう簡単に面倒をみることもできません。

また、母親は賃貸アパートの一室に住んでいます。

問題点

問題点1
母親が認知症を発症すると、賃貸アパートの管理や修繕、新規契約、売却などが、簡単にできなくなってしまう。

認知症を発症すると、契約行為をすることが出来なくなってしまいます。そうなると、成年後見制度を利用するしか方法はなくなりますが、成年後見制度を利用しても、売却や修繕・立替に制限がかかってしまうケースがあります。

問題点2
父親の持分について相続が発生しているが、母親名義に名義変更をすると、二次相続で相続税が発生する可能性がある。ただ、子ども名義にするにも、誰が引き継ぐか決まっていない。

上記の場合で、父親の相続のことを一次相続といいます。配偶者には相続税の優遇が設定されており、配偶者に多く遺産を相続させると相続税の負担が少なくなりますが、安易に母親に多く遺産を相続させてしまうと、母親が亡くなった際の二次相続で多額の相続税を納めなければならなくなってしまうことがあります。

問題点3
母親は、父親と暮らしてきた賃貸アパートをすぐに売却したくないという希望をもっている。

母親が売却したくないからと、なにもせずにいた場合に、【問題点1】のように認知症を発症したら、母親が死ぬまで売却できなくなってしまうこともあります。

家族信託の活用で解決

委託者 母親
受託者 長男
受益者 母親
信託期間 母親の死亡まで
残余財産の帰属先 兄弟

問題点1の解決

不動産の母親持分について信託を設定し、委託者兼受益者を母親、受託者を長男とし、長男に賃貸アパートの管理・処分権をもたせる。

長男が仕事で忙しい場合などは、多少のコストはかかるが、不動産管理会社と賃貸管理契約を結び、基本的な管理は管理会社に任せる。そうすれば、母親は受益者として賃貸アパートの収益を得ながら、管理・処分権は長男にあるので、成年後見制度と異なり、長男の判断で売却することも可能なので、売却して、母親の老後施設の入居費用にあてるなど柔軟な対応が可能になる。

また、母親死亡後は、信託は終了することにし、終了後は子ども3人の所有と定めておけば、母親が亡くなった後に、スムーズに名義変更が可能となる。

問題点2の解決

子ども3人は母親が1人で住めなくなったら売却したいという意向でまとまっていたので、二次相続対策としても、父親持分は子ども3人で平等に相続し、母親が1人で住めなくなったら、信託財産である母親持分とともに売却し、売買代金を兄弟が平等に分配することができる。

父親の相続について遺産分割がまとまらないうちに母親が認知症を発症すると、遺産分割協議をするために成年後見人を選任する必要が出てくるが、その場合、成年後見人は母親の法定相続分は確保しなければならないため、遺産分割協議の内容にも制限がかかってしまう。

問題点3の解決

家族信託を設定しておけば、母親が元気な間は、住み慣れた賃貸アパートに住むことができ、急に認知症が発症した場合など1人で暮らせなくなったら、受託者が代わりに売却することができ、母親の希望を叶えた上で、老後についても備えることができる。

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