妻を亡くしたAさんは、長女Cさんと2人で暮らしています。長女Cさんは統合失調症を患い自活する力がありません。長男Bさんは結婚してAさんの家の近くに4人家族で住んでいます。
次女Dさんは外国人と結婚して海外に永住し、今や音信不通です。Aさんは自宅や預貯金があるため、長女Cさんとの2人分の生活資金に不安はないが、自分が衰えた際や亡き後の長女Cさんが心配でなりません。音信不通の次女Dさんに財産を遺したくない一方で、長女Cさんの生活費等を全面的に面倒みてくれるならば、長男Bさんに全ての財産を遺すことも検討しています。
問題点とそれに対する対策
- 長男Bさんに全ての遺産を渡しても、本当に長女Cさんの生涯の面倒をみてくれるかどうか保障がありません。
→長男Bさん家族の負担を最小限にしつつも長女Cさんの生涯に亘る生活を守れるようにします。
- 上記の問題を回避するために、遺言で長女Cさんに遺したAさんの財産は、将来長女Cさん死亡後に次女Dさん側にも権利が発生してしまいます。
→Aさん及び長女Cさんが亡くなったあとの財産は、長男Bさんに遺します。
家族信託で解決
委託者 | Aさん |
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受託者 | 長男Bさん |
受益者 | Aさん、長女Cさん |
信託監督人 | 司法書士E |
信託期間 | Aさん及び長女Cさんの死亡まで |
残余財産の帰属先 | 長男Bさん又は長男Bさんの家族 |
- 法定後見制度を利用して頼れる第三者を確保
Aさんは、Aさん自身と司法書士Eの2人を長女Cさんの成年後見人とする法定後見人選任申立てをし、Aさんの急病や急死という事態でも長女Cさんが困らない体制を準備します。 - 信託で老親と障碍者のための財産管理を実行
Aさんは、長男Bさんと信託契約を締結し、自宅不動産を含む長女Cさんに遺したい財産の管理を託します。
長男Bさんは、Aさんの老後の生活をサポートするとともに、Aさん亡き後は、長女Cさんのために不動産や通常は使う必要のない金融資産の管理を行います。なお、身上監護や日常生活費の支払い等は後見人が行うので、長男Bさんの負担は軽くなります。 - 2次相続後の承継者指定で相続人間の争いを回避
遺言の書けない長女Cさんには信託財産として遺すことで、長女Cさん亡き後の財産についてその法定相続人による遺産分割協議の余地を排除し、長男Bさん側に確実に渡すことができます。